くまごろうです。各試験区分にはそれぞれ特徴があります。
どのような経験を持っていれば受かりやすいのか。そして試験を攻略するためのキーポイントを解説します。

今回の記事では論述試験を解説するよ!
この記事では論文系試験の
- システムアーキテクト試験(SA)
- ITサービスマネージャ試験(SM)
- プロジェクトマネージャ試験(PM)
- システム監査技術者試験(AU)
- ITストラテジスト試験(ST)
について、
- IPAが定義する人物像
- おすすめな人
- 論文のテーマ(参考)
- 攻略するためのキーポイント
をそれぞれ解説していきます。

くまごろうの得意分野なので腕がなる!
論文編では、くまごろうが準備で執筆した論文テーマも公開します。
論文の骨子のみを作成したものもありますが、今回公開したものの中には含まれていません。
なお、以下の参考書が各論文を俯瞰して確認できるのでお勧めです。
システムアーキテクト試験(SA)
ITサービスマネージャ試験と並んで論文試験の登竜門となるシステムアーキテクト試験です。
システム開発のにおける要件定義、設計、テスト計画などを作成し、プロジェクトチームを主導するプロジェクトリーダーを対象とした資格になります。
IPAが定義する人物像
高度IT人材として確立した専門分野をもち、ITストラテジストによる提案を受けて、情報システム又は組込みシステム・IoTを利用したシステムの開発に必要となる要件を定義し、それを実現するためのアーキテクチャを設計し、情報システムについては開発を主導する者
IPA 独立行政法人 情報処理推進機構:情報処理技術者試験・情報処理安全確保支援士試験
おすすめな人
有利な業務経験
システム開発においてプロジェクトリーダーを行っている方に有利な資格です。またプロジェクトリーダーに関連するプロジェクトマネージャーやシステムエンジニアなどにもおすすめです。
これらの方々は、日常的に要件定義や設計、テスト計画などを作成し、あるいは参照されている方々ですので、業務で得た知見を試験に生かすことができます。
システム開発を行わない方は、ほかの試験区分の受験をお勧めします。
資格関連
応用情報技術者試験、プロジェクトマネージャ試験をお持ちの方は有利です。
民間の試験については、システムアーキテクトに該当する試験はあまり聞いたことがないですね。
論文のテーマ(参考)
くまごろうが準備した論文のテーマは以下のようなものになります。
- 【H25-1】要求を実現するうえでの問題を解消するための業務部門への提案について
- 【H21-1】要件定義について
- 【H19-1】業務システムのセキュリティ対策の設計について
- 【H27-1】システム方式設計について
- 【H22-2】システム間連携方式について
- 【H23-1】複数のシステムにまたがったシステム構造の見直しについて
- 【H23-2】システムテスト計画の策定について
攻略するためのキーポイント
開発プロジェクトに従事する中で発生する課題の解決を論文にできるかがカギになります。
例えば要件定義フェーズにおいて、お客様からの要望を、予算などが限られた条件下でどのように実現するのかが求められます。
このような課題解決を論文の設問に即して描き切れるか、描けるだけの事例を用意できるかが攻略のためのキーポイントとなるでしょう。
ITサービスマネージャ試験(SM)
システムアーキテクト試験と並んで論文試験の登竜門となる試験です。
システムの運用フェーズにおけるシステムサポートをテーマとした試験です。
IPAが定義する人物像
高度IT人材として確立した専門分野をもち、サービスの要求事項を満たし、サービスの計画立案、設計、移行、提供及び改善のための組織の活動及び資源を、指揮し、管理する者
IPA 独立行政法人 情報処理推進機構:情報処理技術者試験・情報処理安全確保支援士試験
おすすめな人
有利な業務経験
一番有利となるのは、ユーザ企業の情報システム部に所属しており、自社で情報サービスを提供している方になります。次点で情報サービスの提供にかかわる人たちで、例えばサービスデスクのマネージャーやリーダー、情報サービス提供元の企業でシステム保守を担当されている方になります。
上記の方々は、日々の業務でサービス提供に関連する様々な事象、例えばインシデントや障害、サービスレベル管理(性能問題)などの対応をされていると思うので、その経験を資格試験に生かすことができます。
システム開発などで製造を主として行われている方にはお勧めしません。
この対象はあくまでもマネージャーになりますので、実務よりもITサービス提供の仕組などの改善に重きを置きます。その点を考慮して資格選びをしてください。
資格関連
ITILファンデーションなどの資格を保持していると有利ですが、ITサービスマネージャ試験を受験する一環で受けられる場合はお勧めしません。
理由としては、ITILファンデーションの受験料が約4万5千円と高額で、得た知識は基本的には午前2でしか利用できない(午後問題で出題はされない)ため、非常にコストパフォーマンスが悪いからです。
ITILファンデーションの受験に受験料を払うのであれば、その分参考図書などの購入に費用を当てたほうが良いと思われます。
論文のテーマ(参考)
くまごろうが準備した論文のテーマは以下のようなものになります。
- 【H22-3】インシデント発生時に想定される問題への対策について
- 【H24-1】重大なインシデントに対する回復時の対応について
- 【H25-1】サービスレベルが未達となる兆候への対応について
- 【H27-1】ITサービスに係る費用の最適化を目的とした改善について
- 【H30-2】ITサービスの運用チームにおける改善の取り組みについて
攻略するためのキーポイント
ITサービスを円滑に提供するための仕組みを作り、改善した事例を表現できるかがカギとなります。
例えばインシデント対応であれば、サービスデスクを作成して利用者からの問い合わせを集約し、情報システム部はエスカレーション先としてサービスデスクで対応できないものを対応することになります。
この時にサービスデスクでの対応完結率向上をKPIとして設定することが多いです。対応完結率を向上させるためには、例えばリリース情報と想定される問題や対応方法をまとめて情報システム部からサービスデスクに共有するなど、具体的な施策を記述する必要があります。
このようにインシデント対応やサービスレベル管理といったキーワードごとに、どのような事柄が課題となり、課題を改善するためにはどのように対応すればよいのかをまとめられるかが鍵になると思われます。
プロジェクトマネージャ試験(PM)
論文試験で最も受験者の多い資格がプロジェクトマネージャ試験になります。受験者人数が多いため情報も入手しやすいです。
また秋試験はシステム監査技術者試験とプロジェクトマネージャ試験しかないため、プロジェクトマネージャ試験が初論文という方も多いのではないでしょうか。
あまり試験対策していないけど受け続けている人が多い印象もあり、試験の難易度がよくわからない資格でもあります。
IPAが定義する人物像
高度IT人材として確立した専門分野をもち、システム開発プロジェクトの目標の達成に向けて、責任をもって、プロジェクト全体計画(プロジェクト計画及びプロジェクトマネジメント計画)を作成し、必要となる要員や資源を確保し、予算、スケジュール、品質などの計画に基づいてプロジェクトを実行・管理する者
IPA 独立行政法人 情報処理推進機構:情報処理技術者試験・情報処理安全確保支援士試験
おすすめな人
有利な業務経験
システム開発においてプロジェクトマネージャを経験されている方は有利な資格です。またプロジェクトマネージャとかかわりのある方、例えばプロジェクトリーダーなども業務をイメージしやすいため、有利だと思われます。
プロジェクトマネージャ試験は、システム開発におけるプロジェクトマネジメントを対象としていますが、プロジェクトマネジメントはシステム開発に留まりません。
システム開発などで製造を主として行われている方にはお勧めしません。少なくともプロジェクトリーダーとしての経験はあったほうが良いと思われます。
資格関連
プロジェクトマネジメントの資格ではPMP試験があり、保持していると有利です。
難易度的にはプロジェクトマネージャ試験のほうが上位にあたりますが、ITサービスマネージャ試験とITILファンデーションのような難易度の格差は存在しないため、プロジェクトマネージャ試験の前段としてPMP試験を受けられるのはよい戦略と思われます。
論文のテーマ(参考)
くまごろうが準備した論文のテーマは以下のようなものになります。
- 【H23-3】システム開発プロジェクトにおける組織要員管理について
- 【H17-1】プロジェクトにおける重要な関係者とのコミュニケーションについて
- 【H25-1】システム開発業務における情報セキュリティの確保について
- 【H28-2】情報システム開発プロジェクトの実施中におけるリスクのコントロールについて
- 【H17-2】稼働開始時期を満足させるためのスケジュール作成について
- 【H19-2】情報システムの本稼働開始について
- 【H26-1】システム開発プロジェクトにおける工数の見積もりとコントロールについて
- 【H18-2】情報システム開発におけるプロジェクト予算の超過の防止について
- 【H21-2】設計工程における品質目標達成のための施策と活動について
攻略するためのキーポイント
試験ではプロジェクトマネジメントを行う上での課題とその解決策の回答が求められます。
例えば品質管理であれば、品質を維持するためにバグ密度などを用いて基準を超えている人を対象に、品質状況を確認していくかと思います。これをより確実にするために、開発者のスキルや過去の傾向を考慮したり、同じ開発者に同じテスト担当者がテストを行い続けないようにするなど、バグ密度が適切に集計され、評価されることが重要になります。
このようにプロジェクトを運営するうえで必要となる各種のマネジメント領域について、よくある発生する問題点とその対応策がまとめられるかがカギとなります。
システム監査技術者試験(AU)
プロジェクトマネージャー試験が最も受験者が多い論文試験でしたが、システム監査技術者試験は最も受験者人数が少ない論文試験になります。
システム監査技術者試験は情報処理技術者試験の中で最も難易度の高い試験区分の1つです。
秋試験にはプロジェクトマネージャ試験があることから、初めての論文試験でシステム監査技術者試験を選択されるとは考えにくく、結果としてほとんどの受験者が論文試験の合格者であると考えられます。
それでいて論文試験の合格率はほとんど同じくらいなので、合格者同士の戦いの中でかなりの人数が落ちています。かなり熾烈な戦いが予想されます。
IPAが定義する人物像
高度IT人材として確立した専門分野をもち、監査対象から独立した立場で、情報システムや組込みシステムを総合的に点検・評価・検証して、監査報告の利用者に情報システムのガバナンス、マネジメント、コントロールの適切性などに対する保証を与える、又は改善のための助言を行う者
IPA 独立行政法人 情報処理推進機構:情報処理技術者試験・情報処理安全確保支援士試験
おすすめな人
有利な業務経験
システム監査に従事されている方は有利ですが、システム監査人という職業はかなりレアなご職業だと思われます。監査人以外にも業務で監査の対応をされている方や、情報戦略を考えられている方は有利だと思われます。
情報戦略を考えられている方が有利な理由としては、情報システムの導入を検討する場合に、社内のセキュリティポリシーなどを勘案して、システム選定を行うことが求められるからです。
これはシステム監査の立場で、導入検討しているシステムをチェックすることに通じる点があります。
監査人やストラテジストが有利である一方で、システム監査やシステム選定に携わらない方は有利ではありません。他の区分を優先した方が良いでしょう。
資格関連
システム監査の資格は公認情報システム監査人などの資格があります。これらの資格をシステム監査技術者の前段として受験するのは良いかもしれません。
論文のテーマ(参考)
くまごろうが準備した論文のテーマは以下のようなものになります。
- 【H25-2】要件定義の適切性に関するシステム監査について
- 【H23-3】システム開発におけるプロジェクト管理の監査について
- 【H22-2】情報システムまたは組込みシステムに対するシステムテストの監査について
- 【H22-3】IT保守・運用コスト削減計画の監査について
- 【H17-3】情報システムの全体最適化とシステム監査について
- 【H27-1】ソフトウェア脆弱性対策の監査について
- 【H27-2】消費者を対象とした電子商取引システムの監査について
攻略するためのキーポイント
システム監査では網羅的な監査が必要となるため、システム監査人はシステム管理基準やシステム監査基準に準拠した監査が求められます。
システム監査技術者試験では、経産省が公開しているシステム管理基準やシステム監査基準の概念を理解する必要があります(結構なページがあるので、暗記までは必要ないです)。
その上で、システム監査基準やシステム管理者基準に沿った回答を行う必要があります。
このように常にシステム監査基準やシステム監査基準を念頭に置いて回答ができるかが、試験攻略のためのキーポイントとなります。
ITストラテジスト試験(ST)
ITストラテジスト試験は、システム監査技術者意見とともに、情報処理技術者試験では最高難易度の資格です。
どれくらい難易度が高いかというと、情報処理技術者試験で唯一、労働基準法だ14条における「専門知識を有する労働者」に指定されるくらいです。
また資格ランキングなどを見ていても、大体のランキングで他の士業と肩を並べる難易度になっています。
試験自体の難易度としても、システム監査技術者試験と同じく、論文合格者による熾烈な戦いを繰り広げている試験でもあり、最難関資格になっています。
IPAが定義する人物像
高度IT人材として確立した専門分野をもち、企業の経営戦略に基づいて、ビジネスモデルや企業活動における特定のプロセスについて、情報技術(IT)を活用して事業を改革・高度化・最適化するための基本戦略を策定・提案・推進する者。また、組込みシステム・IoTを利用したシステムの企画及び開発を統括し、新たな価値を実現するための基本戦略を策定・提案・推進する者
IPA 独立行政法人 情報処理推進機構:情報処理技術者試験・情報処理安全確保支援士試験
おすすめな人
有利な業務経験
情報システム化戦略の立案に携わっている方には有利な資格です。
ITストラテジスト試験自体はCIOや情報システム部の管理職などの立場からの記述を求められるため、このような立ち位置におられる方に有利です。情報システム化戦略の立案に携わっている企画の方も有利です。
具体的には、何らかの情報システムを導入する際、現状の課題の解決、内部統制上の制約、投資対効果などを考える必要があります。このような事柄を業務で考えている方が有利になります。
システム選定などに携わった経験のない方には不利になります。他の試験区分を優先した方が良いでしょう。
資格関連
ITストラテジスト試験と比較されることが多いのが「中小企業診断士」試験になります。試験の形式や問われる内容に違いがありますが、中小企業診断士に合格されている方は当然有利だと思われます。
この2つの試験区分には優劣はありません。中小企業診断士は、ITストラテジスト試験の前段の資格にはなりません。
論文のテーマ(参考)
くまごろうが準備した論文のテーマは以下のようなものになります。
- 【H30-1】事業目標の達成を目指すIT戦略の策定について
- 【H28-1】ビッグデータを活用した革新的な新サービスの提案について
- 【H28-2】IT導入の企画における業務分析について
- 【H27-2】緊急性が高いシステム化要求に対応するための優先順位・スケジュールの策定について
- 【H26-1】ITを活用した業務改革について
- 【H25-2】新たな収益源の獲得または売上拡大を実現するビジネスモデルの立案について
- 【H22-1】事業環境の変化を考慮した個別システム化構想の策定について
攻略するためのキーポイント
ITストラテジストは、作成したシステム化構想などを経営者に提出します。経営者は提出された構想をもとに投資判断を行います。
経営者は何となくの言葉では動きません。経営者を説得するためには客観的な数字を使用し、投資効果を説明する必要があります。
論文では、課題の作り込みと、作り込んだ課題を解決できる施策を、数字などを使用して客観的に表現できるか、これが攻略のためのキーポイントとなるでしょう。
今日の解説はここまでです。
また次回お会いしましょう。それでは!!
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